会長 𠮷田 誠
国立病院機構 福岡病院 病院長
第96回日本呼吸器学会・日本結核 非結核性抗酸菌症学会九州支部春季学術講演会の会長を拝命いたしました。このような機会を与えていただいた関係各位に感謝申し上げます。2026年3月14日(土)に九州大学医学部百年講堂で開催いたします。
本会のテーマ “Translational Respirology”は、Translational Research(橋渡し研究)とRespirology(呼吸器学)からの造語です。呼吸器学における研究がどのような形で臨床に活かされているのか、或いは活かされようとしているのか、共に考える場にしたいという願いを込めました。限られた会期ではありますが、呼吸器の主たる4領域―閉塞性肺疾患・びまん性肺疾患・肺腫瘍・呼吸器感染症―各々でシンポジウムを1題ずつ企画いたしました。臨床への応用を見据えた研究の成果を基に、活発な議論を通して医学研究の魅力を共有して、ご来場の先生方にとって少しでもリサーチマインドを育むきっかけになれば、この上ない喜びです。
招請講演では、リサーチマインドを培ってくれた留学先であるカナダ・McMaster大学呼吸器部門から、Parameswaran Nair教授を迎え、“Biologics on COPD - Hope or Hype?”(COPDの生物学的製剤~期待か誇大か?)という演題で、COPD薬物療法の前途を語っていただきます。Nair教授の豊富なデータに基づいた堅固な理論展開と、独自の発想から生まれる示唆に富んだ考察を、先生方と分かち合えることを楽しみにしています。
ポスターとプログラム集に使用した写真は、福岡県が誇る世界遺産の一つである「神宿る島」宗像・沖ノ島です。古代から大陸への交通の道標であり、航海安全の守護神として崇められてきた島で、今回の主題であるTranslational(橋渡し)のシンボルとして起用しました。連綿と受け継がれた祭祀で神に捧げられた宝物は、発見されたものだけでも8万点を数え、全て国宝に指定されています。「海の正倉院」とも称される沖ノ島には及びませんが、本学術講演会でも珠玉の演題が数多く集まることへの願いも重ねました。
大陸交易の玄関口として発展した福岡は、現在もアジアに開かれた都市です。2つの再開発プロジェクト「天神ビッグバン」と「博多コネクテッド」で、目まぐるしく進化し続ける福岡と博多の街も満喫しながら、充実した日を過ごしていただきたいと願っています。
最後に、ご多忙中に講演および座長を引き受けて下さった先生方、ご支援いただいた企業の皆様、日本呼吸器学会・日本結核 非結核性抗酸菌症学会九州支部ならびに本学術講演会事務局の関係各位、そしてご参加の皆様に、心より感謝申し上げます。